㈲かんじゅう製作所 香港事務所

           コッソリ京都に帰ってます。(;´∀`)

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クリスマス特別企画 第2弾

そのバーは香港島の繁華街、
コーズウェイベイの雑居ビルの一室にある。
カウンターとテーブルが3つ程度の小さなバーだ。

俺はエレベーターを降り、少しゆっくりした足取りでそのバーの
扉の前まで行き、ゆっくりと扉を開けた。


客は誰もいない。


カウンターの向こうでグラスを拭いている店主は
顔を上げいらっしゃいませ、と言おうとしたが
扉を開けた人間が俺だとわかると何も言わず、再び下を向き
グラス洗いを続けた。

俺も特に挨拶を言うわけでもなく
カウンターの端のいつもの席に腰を下ろし、
ポケットからタバコを取り出し火をつけた。
一息吸い、大きく煙を吐き出す。

店主が灰皿を持ってやって来た。
「相変わらずヒマそうだな。」
「バカ、何時だと思ってんだ。さっきやっと一通り掃けたところだ。」
俺は腕時計に目をやった。
午前2時だった。


香港のバーは欧米スタイルのPUBと呼ばれる
騒々しいタイプの店か、客の横にホステスがつくいわゆるキャバレー
のような店、ホテルのラウンジが大半で
日本で言われる『ショットバー』のような静かでこじんまりと
ゆっくりと酒を楽しむスタイルの店が殆ど存在しなかった。
そこに目をつけた店主が香港で働く俺のような駐在員や
現地採用で働く女性たちがゆっくりと楽しめる店をというコンセプトで
2年前にオープンした。
宣伝は殆どしなかったが口コミで評判は広がり、
今では結構繁盛している。

「今日は何軒目だ。」
「三軒目。さっきやっと開放されたよ。」
「そりゃお疲れさん。」

店主はショットグラスにスコッチを注いだ。

Laphroaig 15年

ストレートで飲む。
アイラモルト独特の香りが口の中に広がる。

しばらく店主とどうでもいいような話をしていた。
子供の話とか、共通の友人の話とかそう言う話だ。
そうしているうちに新しい客がやって来た。

店主は今度はちゃんといらっしゃいませ、と声をかけた。


俺は壁にもたれ目を閉じここ数週間のうちの事を思い出していた。
過ぎてしまった事を悔やんだって仕方がないと
自分に言い聞かせつつも
失ってしまったものの大きさに悲しさが覆ったりした。

だめだな。やっぱり少し飲みすぎているのかもしれない。

でも、俺自身はちゃんとわかっている。
本当は考えたくないのだ。
この夜が明けてから3日間、
自分の身に降りかかるであろう災難のことを。


「おい、大丈夫かい。」

店主が声を掛けに来た。

「ん?、あぁ、大丈夫だよ。」
「少し疲れてんじゃないのか。
昨日、上海から戻ったばかりなんだろう。」
「明日も仕事だしな。失礼するとしますかね。」

俺はグラスに残ったスコッチを飲み干した。
席を立ち、金を払って扉に向かう。

「おやすみ。気をつけてな。」
「ありがとう。おやすみ。」


ビルを出てタクシーを拾い広東語で場所とアパートの名を告げる。
タクシーのデジタル時計は3時12分を表示していた。



























              クリスマス特別企画 第2弾


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